アマゾンが「究極の財務諸表はフリー・キャッシュフロー」だと断言する理由
1989年、慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業。米国ニューヨーク州ロチェスター大学経営学修士(MBA)。富士銀行(現みずほ銀行)、英バークレイズ証券、ベンチャーキャピタルを経て、2004年にオオツ・インターナショナルを設立し、代表取締役に就任。
会計・財務に関わるコンサルティングや、年間40社の企業を訪問し、アカウンティング(財務会計、管理会計)、コーポレート・ファイナンスを中心に、日本語、英語による実践的マネジメント教育に従事。
ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学大学院客員教授。早稲田大学大学院経営管理研究科、慶應義塾大学理工学部でも非常勤教員として指導している。東京証券取引所上場企業複数社での社外役員を兼務。
著書に『戦略思考で読み解く経営分析入門』『英語の決算書を読むスキル』(以上、ダイヤモンド社)、『ビジネススクールで身につける会計×戦略思考』、『ビジネススクールで身につけるファイナンスと事業数値化力』(以上、日本経済新聞出版)、共著に『会計プロフェッショナルの英単語100』(ダイヤモンド社)などがある。
アマゾンが「利益率の最大化」よりも
重要視しているものとは
ここまでに見た売上高営業利益率やEBITDAマージンはすべて利益率としての経営指標であった。当社が利益率の最大化を目的とせずに、CFの実額を最大化することを目指すと宣言しているのは、自社がポジショニングしている市場の成長性がこれからも大きいという見解の表れである。
その1997年の「株主への手紙」の中で、8回にもわたって登場する言葉が、Long Term(=長期)である。長期的な視点を持って経営を行う必要性はどんな経営者でも口にするが、24年後のアニュアルレポートに、当時の主張をそのまま一字一句変えずに添付できる経営者、あるいは企業がいったいどれだけ存在するであろうか。もちろん、その過程で企業が成長していることは前提である。
(本稿は、『企業価値向上のための経営指標大全』から一部を抜粋・編集したものです)
参考文献
*1 Amazon.com, Inc. “2004 Letter キャッシュフロー管理で失敗しない方法とは to Shareholders”, 2005.
*2 Amazon.com, Inc. FORM 10-K, 2020.
*3 キャッシュフロー管理で失敗しない方法とは Amazon.com, Inc. "2003 Annual Report".
*4 Amazon.com, Inc. “1997 Letter to Shareholders”, 1998.
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『企業価値向上のための経営指標大全』
『企業価値向上のための経営指標大全』
大津広一著 定価:3960円
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【著者プロフィール】
大津広一(おおつ・こういち)
1989年、慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業。米国ニューヨーク州ロチェスター大学経営学修士(MBA)。富士銀行(現みずほ銀行)、英バークレイズ証券、ベンチャーキャピタルを経て、2004年にオオツ・インターナショナルを設立し、代表取締役に就任。米国公認会計士。会計・財務に関わるコンサルティングや、年間40社の企業を訪問し、アカウンティング(財務会計、管理会計)、コーポレート・ファイナンスを中心に、日本語、英語による実践的マネジメント教育に従事。ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学大学院客員教授。早稲田大学大学院経営管理研究科、慶應義塾大学理工学部でも非常勤教員として指導している。東京証券取引所上場企業複数社での社外役員を兼務。著書に『戦略思考で読み解く経営分析入門』『英語の決算書を読むスキル』(以上、ダイヤモンド社)、『ビジネススクールで身につける会計×戦略思考』、『ビジネススクールで身につけるファイナンスと事業数値化力』(以上、日本経済新聞出版)、共著に『会計プロフェッショナルの英単語100』(ダイヤモンド社)などがある。
失敗しない会社経営 その4・中小企業が使える管理会計④構築編・ケース①
1)構築編の読み方フローチャート
図A〈構築編の読み方フローチャート〉(クリックで拡大)
2)ケース①(管理会計が未導入、又は損益分岐点程度までの導入の場合)の構築
この評価を行うための手段は、財務分析の一環である『当座比率』と『売上高経常利益率』である。
図B[当座比率と売上高経常利益率の算定式](クリックで拡大)
特に、当座比率そのものが80%程度で、かつ、売上高経常利益率が1%を切っていたりマイナスだったりするような場合には往々にして「短期的にかなり問題がある」状態だと言えよう。このような場合には応急処置的な資金繰り改善がほぼ必須というような状態に極めて近く、管理会計云々よりも先にそちらをクリアしなければならないと考える(分かりやすく表現すると、事業再生に近い状態)。
また、当座比率が100%を切っていながら、かつ、売上高経常利益率が1%前後であるような場合は、「短期的な問題はまだそれほどない」ものの、しかし仮に融資の返済などの負担がある場合には応急処置的な改善に迫られる状況に近く、危険性は相応にあるような状態だと言えよう。もし、売上高経常利益率が5%前後やそれ以上であるようならば(規模にもよるが)、今後財政状態は今よりも良くなっていくことが期待できる。
そして、当座比率は余裕で100%を超えており、かつ、売上高経常利益率が5%を超えるような状態が続いている場合は、「短期的な問題はそれほどない」以上に健全な状態だろうと言える。しかし、もし売上高経常利益率が1%前後であるような場合には、場合によっては今後の財政状態は簡単に悪化するかもしれない可能性を抱えている不安な状態であると言える。
図C[財政上の問題評価](クリックで拡大)
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